花輪公雄:海洋の物理学

海洋の物理学 (現代地球科学入門シリーズ)

海洋の物理学 (現代地球科学入門シリーズ)

 

某市立図書館で1時間で読み流す(買えよ!).購入してくれた図書館に感謝(だから買えよ!!).

格調高く読み易い素敵な本.

序文の書き振りだけで少し感動してしまった:

人類は今,惑星に探査体を自由に送ることができる時代となった.しかし,歩けばたった数時間の距離である海の深部に,いまだ自由に人を送り込めない.10 m 潜るごとに 1 気圧増加する高い圧力の壁が,人類の海での自由な活動を制限しているのである.

確かに!

この続きをさらに引用:

この海を物理学の手法と考え方で理解していこうとする学問が“海洋物理学”である.すなわち,海洋物理学とは,「物理学の視点と手法をもって,海洋の成層と循環の動的な姿を観察し,その変動の機構を解明し,将来の変化を予測可能にする学問」といえる.

ああ,なるほど,海洋物理学ってそういう学問なんだ,と素直に受容できる簡明な定義付け.

目次はこんな感じ:

第1章 地球の海

第2章 海水の性質

第3章 地球の熱収支

第4章 海洋への強制力

第5章 海洋の成層構造

第6章 海洋の大循環

第7章 海水の運動方程式と地衡流

第8章 海洋大循環論

第9章 海洋の短周期波動

第10章 海洋の長周期波動

第11章 潮汐と潮流

第12章 海洋の観測と監視

第13章 気候変動と海洋

第14章 地球温暖化と海洋

 数式がまともに出てくるのは,第7章と第10章.ここさえ気合を入れれば,初学者でなければ,海の景色を眺めるように他の章を読むことができる.少なくとも私はそんな印象で読んだ.そりゃそうだろう,20年ほど前に花輪先生の講義を受けたのだから.講義中に眠りに落ちたし他人のノートで辛うじて単位を取った程度だったうえに例に漏れずすぐに内容を忘れてしまったけれども,「ナビエー・ストークスの式」(第7章)というキーワードを(その方程式自体は書けなくとも)覚えているというのは大きい.「耳学問」って大事だなぁ,というか研究室紹介のときに耳学問の大切さを語っていたのも花輪先生だった.別の研究室を選択したけれど.(書きかけ)